アイエム～心に残るちょっといいお話～

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アイエムセレクション～心に残るちょっといいお話

【 1】世界に輝く小さな体	【 2】涙がとまらない、日常の中の小さないい話
【 3】大金を手にしたらどうする？	【 4】掃いても、掃いても、木の葉は落ちる。
【 5】人生で言われる3つの「ありがとう」

No.10　「十万両を百万両にすることは容易いことですが....」

京都の紀伊国屋亦右衛門は、若い頃大きな商家で働いていました。非常に才気があり利口だったので、主人から「金百両を与えるから、思う存分商売をして千両になったら帰ってこい」
と言われました。大層喜んだ亦右衛門は、早速商売に出かけました。初めから大きな商売をしては失敗するかもしれない。小さい商いから始めて確実に利益をあげていこうと考え、まず紙くずを買ってちり紙にすき直して売りました。三年間に三百両になり、五年間で千両の財産を作りました。
「先年頂きました百両で、千両の資本を作りました」亦右衛門は主人のもとへ帰って御礼の挨拶をしました。主人は彼の商才に感心して、
「才能ある人間だと見込んではいたが、驚いた奴だ。今度はその千両で一万両を作ってみないか」
と激励しました。五、六年の後、亦右衛門は言われたように千両を一万両にして帰ってきました。主人は驚嘆して、今度は十万両にせよ、と命じ、三年後にそれも成し遂げました。ますます欲が深まってきた主人は、さらに百万両儲けて帰れ、と命じました。
この時亦右衛門は
「十万両を百万両にするのは百両を一万両にするよりも容易いことですが、命あっての金であります。どれだけあっても金は、これで十分とは思えません。人間の欲には限りがありません。限りなき欲の奴隷に私はなりたくはありません。」
きっぱりと主人の要望を断わり、その後は仏門に入ったそうです。